仲裁地と準拠法は、仲裁条項の中で別々に決める二つの選択です。仲裁地は、仲裁手続を規律する法と、仲裁判断を取り消すことができる裁判所を決め、仲裁判断はその地でされたものとみなされます(日本の仲裁法第39条第4項)。準拠法は、当事者の権利義務という実体の問題に仲裁廷が適用する法です(仲裁法第36条)。トルコの国際仲裁法(第4686号)も同じ区別に立ち、仲裁地は当事者が自由に定め(第9条)、実体については当事者が選んだ法に従って判断します(第12条C)。仲裁法にもニューヨーク条約にも「準拠地」という語はなく、この言葉で調べる方が知りたいのは、多くの場合この二つのどちらか、または両方です。
根拠:日本の仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)、外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約、トルコの国際仲裁法(第4686号)と国際私法及び国際民事手続法(第5718号)の統合本文。
仲裁地は何を決めるのですか?
仲裁地は当事者が合意で定め、合意がなければ仲裁廷が当事者の利便その他の事情を考慮して定めます(仲裁法第28条第1項、第2項)。仲裁地は法的な場所であって審理の場所ではなく、仲裁廷は仲裁地にかかわらず、適当と認めるどこででも評議、陳述の聴取、物や文書の見分を行うことができます(第28条第3項)。仲裁判断書には仲裁地を記載し、仲裁判断は仲裁地においてされたものとみなされます(第39条第3項、第4項)。
仲裁地が決めるのは、どの国の仲裁法が手続を規律し、どの国の裁判所が仲裁判断を取り消せるかです。日本の仲裁法の手続規定は仲裁地が日本国内にある場合に適用され(第3条第1項)、日本の裁判所による仲裁判断の取消しは仲裁判断書の写しの送付による通知から三箇月以内に申し立てます(第44条第2項)。トルコの国際仲裁法は、外国的要素があり仲裁地がトルコと定められた紛争、または当事者や仲裁廷がこの法律を選んだ紛争に適用され(第1条第2項)、仲裁判断に対しては取消しの訴えしかなく、それは管轄の地域控訴裁判所(bölge adliye mahkemesi)に通知から30日以内に提起し、提起によって仲裁判断の執行は当然に停止します(第15条A)。住所または常居所がトルコ国外にある当事者は、仲裁合意の中の明示の宣言または後の書面による合意によって、取消しの訴えを全部または特定の事由について放棄することができます(同条)。
準拠法は何を決めるのですか?
仲裁廷が仲裁判断において準拠すべき法は当事者が合意で定め、ある国の法令が定められたときは、反対の意思が明示されない限り、抵触する内外の法令の適用関係を定めるその国の法令ではなく、事案に直接適用されるその国の法令を定めたものとみなされます(仲裁法第36条第1項)。合意がなければ、紛争に最も密接な関係がある国の法令を適用し(第36条第2項)、衡平と善による判断は当事者双方の明示の求めがある場合に限られます(第36条第3項)。トルコの国際仲裁法第12条Cも同じ構造で、当事者が選んだ法の実体規定に従い、選択がなければ最も密接な関係にある国の実体法により、衡平による判断は当事者が明示に権限を与えた場合に限られ、契約の解釈と補充には商慣習が考慮されます。
ですから、仲裁地を東京とし準拠法をトルコ法とすることも、仲裁地をイスタンブールとし準拠法を日本法とすることもできます。二つは互いに他方を決めません。
三つ目の法、仲裁合意そのものの準拠法とは何ですか?
仲裁合意が有効かどうかは、契約の準拠法とも手続法とも別に判断されることがあります。日本の仲裁法は、当事者が仲裁合意に適用すべきものとして指定した法令、その指定がないときは仲裁地が属する国の法令によって、仲裁合意の効力を判断します(第45条第2項第2号)。ニューヨーク条約第五条1(a)も、当事者が準拠法として指定した法令、指定がなかったときは判断がされた国の法令によるとしています。トルコの国際仲裁法では、仲裁合意は当事者が仲裁合意に適用するものとして選んだ法、選択がなければトルコ法に適合すれば有効です(第4条)。
そして仲裁合意は主たる契約から独立しています。日本の仲裁法は、他の契約条項が無効とされても仲裁合意は当然にはその効力を妨げられないとし(第13条第7項)、トルコの国際仲裁法も、主たる契約が有効でないことを理由に仲裁合意を争うことはできないとしています(第4条)。
仲裁地と準拠法を表で比べると
| 項目 | 仲裁地 | 契約の準拠法 |
|---|---|---|
| 決めるもの | 手続を規律する仲裁法と、取消しを判断する裁判所 | 当事者の権利義務の実体 |
| 日本の仲裁法 | 第28条、第39条第4項、第44条 | 第36条 |
| トルコの国際仲裁法 | 第1条第2項、第9条、第15条A | 第12条C |
| 審理の場所で変わるか | 変わらない(仲裁法第28条第3項、国際仲裁法第9条) | 変わらない |
| 執行での意味 | 条約第五条1(d)(e)の基準となる国 | 実体の判断そのもの。仲裁合意の有効性は別の準拠法による |
仲裁地は仲裁判断の執行にどう影響しますか?
国外でされた仲裁判断の承認と執行は、外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(ニューヨーク条約)によります。日本は1961年6月20日に加入し、同年9月18日に効力が生じ、相互主義の宣言をしています。トルコは1992年7月2日に加入し、同年9月30日に効力が生じ、他の締約国の領域でされた判断にのみ、かつ自国法上商事と認められる法律関係から生ずる紛争にのみ適用する旨を宣言しています(条約第一条3)。条約第五条1は、仲裁機関の構成または仲裁手続が当事者の合意に、合意がなければ仲裁が行われた国の法令に従っていなかったこと(d)、判断がされた国の権限のある機関により取り消されまたは停止されたこと(e)を拒否事由とし、どちらも仲裁地を基準にしています。
トルコで外国仲裁判断を執行するには、第一審裁判所(asliye mahkemesi)の執行許可(tenfiz)を得ます。確定し執行力を得た、または当事者を拘束する外国仲裁判断が対象で、管轄は当事者が書面で合意した裁判所、合意がなければ相手方のトルコの住所、次に居所、それもなければ執行の対象となる財産の所在地の裁判所です(第5718号法第60条)。提出するのは仲裁合意、仲裁判断、その正当に認証された翻訳の三つです(第61条)。拒否事由は第62条第1項に列挙され、そのうち代理、通知、仲裁合意の有効性、手続、範囲、判断の拘束力と取消しに関する事由は、執行を求められた相手方が証明しなければなりません(第62条第2項)。外国人の申立人は、相互主義による免除がない限り、裁判所が定める担保を提供しなければなりません(第48条)。
日本で仲裁判断を執行する場合は、仲裁地が日本国内にあるかどうかを問わず仲裁判断は確定判決と同一の効力を有し(仲裁法第45条第1項)、民事執行には裁判所の執行決定が必要で、仲裁判断書の写し、その同一性を証明する文書、日本語の翻訳文を提出します(第46条第1項、第2項)。拒否事由の多くは、ここでも被申立人が証明しなければなりません(第46条第7項)。
仲裁条項には何を書くべきですか?
仲裁地を法的な仲裁地として国と都市で、契約の準拠法を、必要であれば仲裁合意の準拠法を、仲裁機関とその規則を、言語と仲裁人の数を、それぞれ別の文で書きます。都市名だけ、機関名だけの条項は、それが仲裁地なのか審理の場所なのかをめぐって本案の前に争いを生みます。仲裁合意は裁判所の保全処分を妨げず(仲裁法第15条、国際仲裁法第6条第1項)、トルコでは仲裁廷は執行機関による執行を要する措置や第三者を拘束する措置を命じることができないため、銀行口座の仮差押えは裁判所に申し立てます(国際仲裁法第6条第2項)。私どもが扱う国際仲裁の業務はトルコにおける国際仲裁のページにあります。
本ページは、2026年9月30日に読んだ日本の仲裁法、外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約の日本語本文、トルコの国際仲裁法及び国際私法及び国際民事手続法の原文に基づく一般的な情報であり、個別の案件に対する法律意見ではありません。委任関係は委任契約の署名によってのみ成立します。